カメラやビデオの商品戦略の一つとして、光学ズームが取り上げられたのはいつの頃からでしょうか… もう遠い昔のような気がします(汗) 数年前、某社のデジタルビデオカメラのCMで「x8レンズもデジタルズームで一気に倍!」って感じの宣伝文句があったような気がしますが、やはり運動会で娘の勇姿を撮る場合や、旅行で遠くの山々を撮影する場合など、ある程度の倍率が必要不可欠になります。 この傾向はデジタルカメラの分野でも例外ではなく、ある程度大きめの、高級機と呼ばれるコンパクトデジカメの場合、その多くが光学8倍以上のズームを搭載しています。 では小ささを売りにしている機種はどうなのか、と目をやれば、デジタルズームを搭載することで妥協しています。 デジタルズームはその名の通りデジタル、つまりソフト的に拡大処理を施す手法です。ま要するに拡大コピーしている訳ですね。 ただ、デジタルズームはあくまで仮想的に拡大しているに過ぎないため、どうしても画が汚くなります。アナログコピーの拡大と違って、かくかくした、ブロックの集合のような画になってしまうので、ちょっと悲しい気分になってしまいますね。 では一眼レフデジカメはどうなのか、と観てみると、流石にデジタルズーム搭載している機種はあまり見ません。 まぁ高級志向の一眼レフでデジタルズームの需要はさほど多くないでしょうから、当然といえば当然ですね。 しかし、そうなるとレンズの倍率が即、撮影可能な望遠サイズに直結します。 最近では、店頭で自分で印刷出来るデジカメ現像機(?)も多く、それらの中には拡大処理が可能な物もあるかもしれませんが、それはあくまで裏技的な手法。基本的には一眼レフデジカメではレンズ倍率=撮影倍率と考えるべきでしょう。 勿論、一眼レフのメリットはレンズを交換出来ることなので、高倍率の望遠レンズを搭載すれば簡単に望遠撮影が出来ます。しかし、ここでポイントになるのは、そのサイズです。 野球中継で、白くておっきな大砲みたいなレンズ付けたスポーツカメラマンを見たことがある方もいらっしゃるでしょう。あれはプロ用なので我々素人が扱う物ではありませんが、それでも望遠レンズはそれなりにかさばることが多いです。 また、現実問題として、望遠用レンズを選択する場合、近距離撮影時には標準レンズと交換する必要が出てきます。砂埃舞う校庭でレンズ交換をするのは、あまりお勧め出来る行為ではないでしょう。
右がタムロンAF28-300mm。左はいつものレンズキット付属レンズ。タムロンの方が若干大きめですね。ちなみに最大望遠時は長さが約二倍になります。 そこでお勧めなのが、近距離から遠方までを一手にカバーするレンズ、"高倍率標準ズーム"の選択です。 この種類のレンズの特徴として、kissDレンズキット付属レンズ並みの近距離も撮影可能ながら、光学8倍程度の高倍率にも対応する、マルチな撮影範囲をカバーしている点が上げられます。 つまり、基本的にはコンパクトデジカメと同じような、広い範囲の撮影が可能になる訳です。 ということで今回取り上げるのは、タムロンから発売されている「タムロンAF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di LD Aspherical [IF] MACRO (Model A061)」というレンズです。 (う〜む商品名長いなぁ…) 高倍率標準ズームは各社から出ていますが、今回はサードパーティーから出ているレンズを選択してみました。 詳しくはタムロン社のニュースリリースをご覧頂くとして、このレンズの特徴はその商品名にもあるように、28mmから300mmという広い範囲をカバーしている点です。 kissDで使う場合、一般的な35mmフィルムに換算すると44.8mm〜480mmになります。光学10倍近いでしょうか。これだけあれば一般的な望遠撮影に困ることはありません。 論より証拠。まずは撮影した映像を見てみましょう。 ※なお、以下の作例でコメント欄が水色の物については、リンク先の画像は無加工(ファイル名のみ変更)になります。 【EF-S 18-55mm F3.5-5.6 USM】 1536x1024 / 1/3200秒 / F3.5 / ISO200 / 18mm 【EF-S 18-55mm F3.5-5.6 USM】 1536x1024 / 1/1600秒 / F5.6 / ISO200 / 55mm まずは左の写真。 kissDレンズキット付属のEF-S 18-55mm F3.5-5.6 USMによるワイド端ですね。 流石に広く撮れています。 一応、センターにあるビルの合間から見えている樹木をフォーカス対象にしているのですが、左右のビルどころか、撮影場所である駅の柱さえ撮れています。 シャッタースピードとかが凄い値です(汗)。流石に太陽光あふれる屋外は違いますね。 次に、同じレンズでテレ端、つまり最大望遠にした場合の写真が右です。 樹木の枝振りが若干把握出来ますが、やはり「ビルの間に樹木が見える」感じですね。 それではここでレンズ交換。 タムロンレンズで撮影してみましょう。 【AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di】 1536x1024 / 1/3200秒 / F3.5 / ISO200 / 28mm 【AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di】 1536x1024 / 1/1000秒 / F6.3 / ISO200 / 300mm 左が、タムロンAF28-300mm F/3.5-6.3 XR Diでのワイド端です。 28mmなので18-55mmよりは狭い範囲になっています。 まぁ、実害はないと思われますね。 そしていよいよ注目の、AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Diでのテレ端、最大望遠が右です。 やはり倍率が凄いです。モニタで見る場合には葉の一枚一枚が確認出来ます。 今回は撮影場所を変えていないので右側にビルが写り混んでいますが、ちょっとずれれば樹木のみを撮影することも十分可能ですね。 てな訳で、やはり光学10倍相当は凄かった。 これだけズーム幅があれば、ことズーム倍率に関しては普通の使い方してる限り他レンズは不要でしょう。 但し、300mm時は18-55mmの55mm時よりF値が暗いので、どうしてもシャッタースピードが遅くなります。 しかも、倍率が高くなればなるほど、手ぶれの危険性は増大します。近年では高倍率のコンパクトデジカメには手ぶれ補正機能が搭載されているのであまり気になりませんが、kissDのような補正機能を内蔵していない一眼レフデジカメの場合、簡単にブレます。 今回は晴天下だったので1/1000秒という凄い値ですが、暗めの場所では注意が必要です。 まぁ、最大望遠時に手ぶれの危険性は残りますが、日曜カメラマンのお父さんが使うには十分すぎる性能です。 むしろ、これ一本ですべてを片づけても良いような気すらします。 ちなみに、今回はデジタルカメラ向けに設計された「Model A061」を使いましたが、この前のモデルとして、「AF28-300mm Ultra Zoom XR F/3.5-6.3 LD Aspherical [IF] MACRO (Model A06)」というレンズがあります。 インプレス社の「デジカメWatch」というサイトに掲載されている、伊達淳一氏のレビュー記事を読むと、ワイド端での絞り開放の描写、つまり「ズームしない状態で、光の量が少ない状態で撮影するようなケース」では結構な違いがあるようですが、それ以外に劇的に何かが違うのか、といわれると、日曜カメラマンの技量ではあまり目立たない感じなのかな、という気もします。 ちなみに、私の知人が同じタムロンの28-200mmレンズ(たしか「AF28-200mm Super Zoom F/3.8-5.6 Aspherical XR [IF] MACRO (Model A03)」だったと思います)を所有しているので、先日借用してみましたが、ズーム倍率以外で大きな違いは感じませんでした。 勿論、プロの方や、セミプロに近いカメラに詳しい方には大きな違いがあると思うのですが、私のようなドシロウトにはよくわかりません(笑)。 なので、もし中古でA06やA03が安価に見つかったら、それを購入するというのも良いかもしれませんね。
ではこの高倍率レンズ、どこまで遠距離撮影出来る物なのでしょうか? 最後にお遊びとして、月を撮影してみました。 月。地球唯一の衛星。約38万Kmも離れている被写体です。 一体どのような感じになるのでしょう…? 【AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di】 3072x2048 / 1/160秒 / F6.3 / ISO800 / 300mm 縮小加工(800x533) 【AF28-300mm F/3.5-6.3 XR Di】 3072x2048 / 1/160秒 / F6.3 / ISO800 / 300mm トリミング(800x533) 左が、300mmで撮影した物です。 元が3072x2048のため、web掲載のために縮小こそしましたが、それ以外はいじっていません。 なんと、月表面の濃淡がはっきり見えます。 恐るべし、300mmの世界… 調子に乗って、デジタルズーム的に拡大しようと、月周辺の映像を切り抜いてみました。 元の3072x2048の画像から中心部を切り取っただけで、縮小はしていません。 ここまで「拡大」されると、クレーターさえ判別可能ですね。 手持ちのカメラで気楽に撮影したとは思われない映像です。 まぁ、実際に撮影した物を「そのまま」現像に出すと左側の映像になりますので、天体撮影が可能とは言い難いですが、例えば水平線から昇ってくる月を撮るとか、そういう用途には十分使えそうですね。