EOS kiss Digital 初心者奮闘(?)記

kissが上手になりたいなっ☆ 



【その6:パンドラの筒は洗われた】


・汚れは綺麗に落としたい
皆さんは、中古商品を買ったとき、クリーニング作業を行いますか?

私の場合、中古ノートPCなどを購入すると、まず最初にアルコール系のウェットティッシュで表面を拭き取ります。
これは、展示による埃を落とすという意味もありますが、まぁ何というか「お古だからまずは綺麗に」って感覚なんですね。

まぁこれは特例だとしても、例えば購入した商品に(拭き取れば取れる程度の)汚れが付いている場合などは、拭き取る場合も少なくないでしょう。

しかし、拭き取れない場所に、気になる汚れがあったら、貴方はどうしますか?

・安価なジャンクには訳がある
このコーナーの第一回で、中古レンズに関して取り上げましたが、似て非なる存在として「ジャンクレンズ」という物があります。

ジャンクレンズとは、その名の通りジャンク、つまり"がらくた"商品になります。

たいていの中古レンズの場合、初期不良交換保証はありますし、中には数ヶ月の動作保証のある商品もあります。

ところが、ジャンクレンズの場合、一切の保証がありません。
というより、基本的に店側では一切の動作確認をしていない為、何が起こるか分からないし、どこが悪いのかも分からない、非常にリスクの高い商品になります。

一方で、中古レンズと比べて価格が非常に安く、うまくすれば高価なレンズを非常に安価に入手できることもあるのです。


では、ジャンクレンズはどんな問題を抱えているのでしょうか?

一眼レフ用の交換レンズには、主に2パターンのトラブルが考えられます。

1つは、駆動系のトラブル。
AF制御用モーターの故障や、フォーカスリングの破損など、「動き」に関する問題ですね。

これらの破損は物理的ダメージであり、場合によってはカメラ本体にも影響が及ぶ為、どうにかすることは難しいと言えると考えます。

もう1つは、光学系のトラブルです。
レンズが割れたり傷ついたり、内部に目立つ汚れがあったりする場合ですね。

割れてしまってはもうどうすることも出来ませんが、汚れの場合、撮影行為そのものには影響がない場合が殆どです。
ただ、写した写真にゴミが写り込む為、実用に耐えないという訳ですね。


これらのトラブルを抱えたままの商品が、ジャンクレンズとして流通する訳ですが。

光学系トラブルの、レンズ内部の汚れの場合。
逆を言えば、その汚れさえどうにか出来れば、正常に利用できるのではないか?という悪魔のささやきが、私の頭に響いてしまったのです。

・分解せずに洗い落とせないか!?
TAMRON 28-200mm
今回利用したタムロンの28-200mm F3.8-5.6。
28-300mmを所有している現状ですが、銀塩専用とかには使えそう。
さて、この恐るべき実験を前に、何より実験材料を用意しなければなりません。

今回用意したジャンクレンズは、タムロンの28-200mm。購入時の状況としては、AFも正常動作し、撮影したデータにも目立った汚れは見つかりません。
正直、今回のネタがなかったら、このまま使おうかとさえ思うような、ラッキーな一品です。

しかし、やはりジャンク品。
よ〜〜〜く内部を確認すると、微かにカビの痕のような、微妙な汚れが確認できます。

既に述べたように、写真データへの影響は皆無なのですが、仮にカビだとして、カビ菌が生存していると、万が一他のレンズへカビが転移したらかなり凹んでしまいそうです。

ベストはメーカーに修理に出すことですが、これは結構なお値段がかかってしまう可能性があり、ジャンクのメリット「安価」を無意味にしてしまいかねません。
出来れば避けたい所です。

とはいえ、分解清掃を行うには、それ相応の技術が必要と思われます。
あまり手を加えず、リスクを最小限にして汚れを落としたい訳ですね。


つまり。
・分解を行わず、原形を留めたまま処理したい
・埃やカビ菌などを実害のないレベルまで落としたい
・AF制御系の電子回路へのダメージを可能な限り抑えたい
という三点がポイントになります。


ここで想定してみたのが、液体であり、常温で気化し、殺菌能力も併せ持つ、「エタノール」です。

エタノールは一般に消毒用として用いられるアルコールです。メタノールと違って人体への悪影響も少なく、薬局などで比較的容易に入手できます。

このエタノールを使って、レンズ内部の汚れを除去できないか!?
恐るべき博打が、今、幕を上げます。

注意!!
以下に掲載している情報には、非常に危険な行為が含まれています。

これらの行為に及んだ場合、レンズの破損のみならず、失明、負傷、重傷、死亡に陥ったり、火災などにより資産を消失する恐れもあります。
これらの損害、不具合、その他一切の現象について、筆者は一切の責任を負いません。ご注意下さい。

試される場合にはあくまで自己責任で。

・アルコール漬けはいかが?
さて、エタノールで洗うとして、どうやって内部にエタノールを入れ、汚れを洗い落とすのか。

幸か不幸か、レンズという物は密閉空間ではなく、隙間があります。
まぁ隙間がなかったら埃やカビも入り込まないのですが…

ということは、レンズを容器に入れ、大量のエタノールを流し込めば、中までエタノールが行き渡って、洗い落とせそうな予感がします。

実験道具(笑)
用意した機材各種。

…そんな訳で、早速実験。

用意したエタノールは、500mLを2本、合計1L。
エタノールは意外と高価で、500mLで\900-ほどします。あまり大量には購入出来ないのです。

更に、レンズを入れる容器としては、程よい大きさだったヨーグルト自作用のケースを用意。
食料品を扱う為の容器だから、何となく不純物も少なそうで、良さげな感じです。

ついでに、いくら消毒用とはいえ、素手で扱うのはなぁ…と言うことで、ゴム手袋も用意。
実はここから過ちが始まっていたような気がします(汗)。


では、早速実験です。

流石に室内で行うのは、エタノールこぼした時とか面倒そうだったので、風呂場へ移動。

エタノール投入 レンズ水没中…
ケース内に注がれるエタノール。

この時点で既に、作業場所であるお風呂場には消毒用アルコールの匂いが漂い始めています(笑)
  とりあえず漬け込まれるレンズ。

肩まで漬かりましょう(笑) 引き上げ作業
もう一本のエタノールも注入、完全に水没したレンズの図。

浴槽の蓋の上で作業していたので、横から撮るのにPowerShot G5利用でも体勢が辛く、写真が斜めになっちゃってます(汗)
  30分ほど漬け置き消毒させた後、引き上げられたレンズ。

じょぼじょぼと、レンズ内部からエタノールがこぼれ出ています。

とりあえず、容器を少量のエタノールで濯いだ後、残りのエタノールを空け、レンズを入れてみます。

元々500mLでは不足すると思われていたのですが、予想通り「完全に漬かる」には量が足りない。
ということで、更にもう一本を入れます。

エタノールによる消毒時間については、正確なところは知識がないので不明なのですが、色々サイトを見ていると、一部を除いては数分で結構な殺菌能力があるイメージ。
一部の菌類も、30分〜数時間でかなり死滅するようですが、まぁとりあえず30分ぐらい放置してみればいいかな、ということで、気化防止の為の蓋を被せた状態で放置。


さて、いざ引き上げ作業に取りかかると言う時に、最初のトラブルが。

前述したように、素手じゃぁなぁ、ということで、ゴム手袋をしての作業だったのですが。

いざアルコールの中に手を入れていると、な〜んかスースーする。
あれぇ、ゴム手袋してるのになぁ…と思って、はたと思う。

「もしかして、ゴム、溶かしてる!?」

今回利用したゴム手袋は、百円ショップの安価な商品。
実際に溶けているかどうかは別にして、一抹の不安が私の心の中に広がっていきます。
安直な乾かしの図
PCデスクの上でエタノールを乾かしている図(再現)


次に乾燥です。

電子回路への影響を極力減らす為、速やかな乾燥が求められるのですが…

アルコールを吸い過ぎて酔っぱらっていたのでしょうか、焦りから来る暴走だったのでしょうか。

「押入の中では時間がかかる!」

と考えた当時の私は、風通しの良い、というか、エアコンの風が直接当たる、PCデスク上部に、レンズを縦にした状態で置いてみたのです。

右の写真は再現写真として先程撮影したのですが、当時、蓋をしていたかどうかは微妙です。
いや、むしろ「素早く乾燥させる為に」蓋をあえてしていなかったような気さえします。

そのぐらいの”暴走っぷり”だった訳で。


いざ乾燥が終了し、レンズの中を覗いてみると…

なんと!レンズ全体に埃のようなゴミが! Σ(‾□‾;
しかも丁度レンズのセンターぐらいの場所に、0.3mmほどの小さなゴミまで付着しています!!!

orz


…今にして思えば、レンズを縦にするのではなく、横向きで乾燥させていれば、仮にゴミがあっても重力でレンズの外側に押しやられていた筈で。

それに、全体に付着した埃は、エアコンからの風に乗って進入した恐れが高く、正直乾燥方法に気を配っていれば、この時点で問題が解決していたような気がします。


ちなみに、AF動作は問題なく、撮影自体は平気でした。
ただ、ちょ〜っと映像全体が白く濁っているような気もしないでもないなぁ…って感じで。

このときのサンプル写真を消去している辺り、既に正常な判断能力を失っているように思われます(爆)。


…ここで止めておけば良かったんですよ、きっとね…

・アルコールが駄目なら精製水だ!
さて、残ってしまった汚れを洗い落とすにはどうすればいいのか。

再びエタノールを購入すればいいのですが、前記した通りエタノールは意外と高価。あまり大量に買うと本末転倒になってしまいます。


そこで、より安価で、機械への影響の少なそうな液体として、精製水を用意してみました。


精製水とは、「きわめて純粋なH2O」と言えます。

元々、水は通電性がありません。
実験道具 No.2
追加で用意した機材各種。
エタノールほどではないにしても、常温で蒸発し、本来は何も残さないはずなのです。

水道水などが乾くと白く跡が残るのは、あくまで水の中に不純物が含まれているからであり、水のせいではない訳ですね。


ということで、これまた薬局で、精製水を大量購入。
精製水はエタノールと比べて驚くほど安価なので、ある意味気軽に買えます。

ついでに、横向きで乾燥させるべく、レンズを入れる金属製の網も購入。
今度は押入の中でゆっくり乾燥させる方向を目指しました。


ということで、再びお風呂場へ…

精製水投入 レンズ、再び水没中…
再びケース内にレンズを置き、精製水を注ぎ込みます。
水圧で少しはゴミが落ちるかなぁ、と、あえてレンズ内部に水を注ぎ込むような感じで注入。

…防水レンズのデモシーンじゃないんだから(汗)
  再び漬け込まれるレンズ。

こうして写真にしてしまうと、水なのかエタノールなのかよく分かりません(笑)

今回は殺菌の意味はなく、あくまで汚れを落とすのが目的。

ですが、撹拌しない状態で水が固形物を溶かすのにどれぐらいかかるのかよく分からず、結局数十分間放置。
更に、ケース外部から振動を与えてみたりしてみました。


そして、何度か水を交換し、6Lほど消費したところで、レンズを抽出。
乾燥作業に入ります。

初めはジッパー付きの袋に乾燥剤と共に入れて放置してみたのですが、湿度計で測ったら湿度が70%ぐらいあり、「全然乾燥剤が活きてないな」と考え、最後の方は蓋をした上で押入れ内に放置状態でした。


いざ乾燥が終了し、レンズの中を再び覗いてみると…

なんと!前回以上にレンズ全体に白い膜が!!! Σ(‾□‾;

orz


水がレンズ内の余計な物を溶かしだしてしまったのか、素手で直接触っていたので皮脂が溶け出していたのか、原因は分かりません。

AF動作は正常ですが、フォーカスが合わないぐらい、真っ白状態。
はっきり言って使い物になりません。

・ディバ○ディングドライバー、射出!!!
慌ててエタノールを追加購入、再び漬け置き洗浄してみましたが、若干の改善こそ見られるものの、クリーンな状態にするにはほど遠い状態。

ここで、レンズをよ〜〜〜く見てみると、なんと使用されているネジは普通の+ネジ。


…どうせ使い物にならないのなら…

可能性にかけてみるしかない!!

ディバ○ディング・ドライバぁーーー!w マウント内部
遂に回された、レンズマウント部のネジ。

結構堅いネジですが、ラジオペンチで精密ドライバーを回したらあっさり開きました。
  マウント内部。制御回路が見えます。

マウント側の内部ユニット フィルター側のねじ
マウント側のレンズを含む、内部ユニット。

こちらのネジは星状の特殊ネジ。
特殊と言っても秋葉原とかでドライバー買えるのですが…流石にそこまでは、ねぇ。

よく見ると、レンズの汚れが酷いことが分かると思います。
  マウント側は諦め、フィルター側をチェック(笑)

こちらもゴムカバー内のネジは普通の+ネジ

も一つネジが… 遂に分離
フィルター側のカバーを外したところ。

微調整用なのでしょうか、斜めにかみ合わさった場所を+ネジで留めてあります
  使えない物に、微調整もあったもんじゃないw

あっさり外し、遂にレンズユニットが取り外されました。

外されたレンズ 残されたレンズ
取り出したレンズを、蓋を付けたフィルター側のカバーの上に載せてみる

凹状に曲がっているのが分かります。
  こちらは、左のレンズユニットを外したレンズ本体。

残されたレンズが露出しています。
ここにも油のような汚れがびっしり…

汚れをフキフキ こっちもフキフキ
取り出したレンズユニットを、レンズクリーナーで拭いてみる

予想以上に汚れが落ちる。これは行けるか!?
  本体側に残されたレンズも拭き取る。

マウント側のレンズがどうにも外せませんでしたが、とりあえずフィルター側のレンズは取り外しに成功。

レンズクリーナー液を付けたメガネ拭きで拭いてみると、予想以上に汚れが落ちる。
一抹の期待を旨に、拭ける場所はとにかく拭きまくる。


結局、マウント側のレンズユニットに付着した汚れが落とせませんでしたが、それ以外はかなりクリーン。

真っ白だったファインダー内の映像は、一応物が見えるようになりました。


しかし、あくまで「見えるようになった」というレベル。

AF駆動系は問題なく動作するのですが、カメラがフォーカスを合わせられないぐらいに画面は白く濁っています。

試しに、タムロンの 28-300mm F3.5-6.3 と比較撮影してみましょう。

※以下の作例でコメント欄が水色の物については、リンク先の画像は無加工(ファイル名のみ変更)になります。

28-300mm F3.5-6.3 28-200mm F3.8-5.6@汚れ
【TAMRON 28-300mm F3.5-6.3】

1536x1024 / 1/80秒 / F4.0 / ISO800 / 28mm / ストロボ発光
【TAMRON 28-200mm F3.5-5.6 with汚れ】

1536x1024 / 1/60秒 / F4.0 / ISO800 / 28mm / ストロボ発光

まずは左の写真。
こちらが正常な(笑)、28-300mmで撮影した写真です。

そして右が、今回のレンズの最終形態。
まるで霧の中で撮影しているかのようです。


こういう写真も幻想的でよいといえばよいのですが、こういう写真「しか」撮れないのは正直辛いです。

・可能性は垣間見えましたが…
さて、今回の一件を振り返ってみると、やはり最初のエタノールの時点での乾燥が悔やまれます。

あの時点で、きちんと乾燥出来ていれば、あるいは使い物になったかも知れないだけに、残念です。


しかし、仮にあの時点で使えたとしても、使用するエタノールの量を考えると、ジャンクレンズに+2千円とか3千円とかをかける必要がある訳で。

しかも今はAF等正常に動いていますが、未来永劫正常動作するとは限らず、継続利用には不安がつきまといます。


中古と比べて恐ろしく安価なジャンクを見付けた場合であっても、果たして挑戦する価値があるのか…
正直微妙だと思います。


ま、やはり、きちんと動作する物を利用すべきですね(笑)。

<2005.05.01 ななぼん>


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